目に見えるものだけが本当ではないよ  小林浩太朗さんの主張

  小林浩太朗さんが、山梨県の障害者の主張大会で発表した文章です。新聞でも取り上げられました。

「目に見えるものだけが本当ではないよ」

 僕のことを信じてくれますか。
 僕のこの方法で話す言葉を信じてくれますか。
 僕の言葉を母の言葉と思っているかもしれません。ですが僕自身の言葉として伝えたいです。

 僕は小林浩太朗といいます。今回特に主張したいことがあってこの大会にチャレンジすることにしました。
 僕は見た目にはとても障害が重くて、話すこともできないし、一人では気持ちを表現する手段がなかったのですが、手を添えてもらえれば僕にも話をする機会が訪れます。このことを多くの人に伝えたいと思います。
 僕は今あたたかい人との出会いを通して、介助してもらいながら表現する方法にたどり着いたのですが、思いはあってもまだ、息をひそめるようにしてそれを出せないまま暮らしている仲間がたくさんいるので、僕はそのことを大きな声で叫びたいと思いました。
なぜなら、一人では何も出来なくてしゃべれなくても、僕達は心の中に思いや豊かな言葉を持っています。そのことが常識になったら、山ゆり園での事件のようなことが起こらなくなるのではないかと思うからです。
 僕たちは、体が思う通りに動いてくれないので、返事をしたくてもうまく出来ません。そうなるとわかっていないとされがちです。
ですが、返事が正確にできないけれど、僕達にはちゃんと意思があることに気づいてくれる人はちょっとした表情の変化などでわかってくださいます。
 だからそう思いながら接してくれたら嬉しいです。
「わかっていないんじゃないの?」と思いながら接してくれるといい反応が出来なくなってしまいます。
実はしゃべれない僕たちにも、年相応に考えたり感じたりする力があります。ですが僕は、それをうまく表現することができないので、僕自身を抑えて表に出せず苦しい日を過ごしたことも、正直言ってありました。
 そんな僕が自分を表現出来るようになったいきさつをお話しします。
 僕は小さい頃から絵を描(か)くのが好きで、一人では筆を持っていられないので、手を添えてもらって絵を描(か)いていました。ずっと描いているうちに、僕が心で思い描いたものが描(か)けるようになってきました。僕は梅の花というよりも梅の香りを描(か)きたいと思い、実際に描(か)けた時、「目に見えない、香りを絵で表現出来るんだ」と、とてもびっくりしました。
そして去年それをペンや習字の筆に持ち替えたら、字が書けるようになりました。そして指だけでも、手を添えてくれる方の手の平や指にひらがなを書けるようになりました。
 心の中から眠っていたたくさんの言葉たちを次々と飛び出させてもらえたことに、今は感謝の気持ちでいっぱいです。
 だからそんな方法もあるよ、ということを伝えてみたかったのです。
 このように、動きを手伝ってもらいながら家族やヘルパーさんと言葉を交わしている仲間が全国にも多勢います。あちこちで僕のような人が声を上げています。詩集を出版したり、作詞をして音楽祭で賞をいただいた仲間もいます。
 僕も黙っていられなくてこの大会に応募しました。
 なかなか難しいことですが、僕たちもちゃんとした意志も言葉もあることを伝えたくて今日は話をさせてもらいました。
 僕も社会人になり、人生谷もあり山もあることがわかるようになりました。忍耐力や人の立場も理解でき、僕なりの人生を歩むようになり、夢や希望を持つ余裕が出てきました。選挙で投票出来たことも、最近とても嬉しかったことの一つです。
 僕の願いは、同じような環境のもとで生活している仲間が、共に幸せな日々を過ごせることです。これは絶対叶えさせたい強い目標です。そして僕の今描いている絵のテーマは「未来」です。だから未来に向けて僕は今一生懸命生きようとしています。絵や文章で僕の心を精いっぱい表現してゆこうと思います。
 今日僕が話したことで、少しでも僕達の本当の姿を理解していただけたらほんとうに嬉しいです。
 ありがとうございました。

                               小林浩太朗

コメント

信じる・信じないの問題にして良い?

 根拠を出さずに、ただ「信じて」と言うのは、あまり建設的でないのではないかと私は思います。
 警察や裁判でも、証拠なしに答えを決めるのは良くない事です。「証拠がないから判断できない」「証拠がないから無責任に信じるとは言えない」というのが正しい態度ではないかと思います。
 もちろん小林さんは一般市民ですから、そういった証拠を提出する義務があるとまでは言えないと思います。しかし柴田先生は研究者なのですから、そういった検証を行える環境も責務もお持ちだと思います。
 本当にこの事を世の中に受け入れてもらおうと思えば、柴田先生をはじめとした研究者の方々には、検証結果を広めるといった努力をして頂ければと願っております。

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プロフィール

柴田保之

Author:柴田保之
所属:國學院大學人間開発学部初等教育学科
重度重複障害児の教育、知的障害者の社会教育、介助つきコミュニケーションについて実践的に研究を進めています。

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