相模原の事件について 12月23日

 神奈川県の施設でRさんから聞いたやまゆり園事件にかかわる3編の詩を聞いた。 

  やまゆりの涙

やまゆりの花が無残にも踏みしだかれた夏の未明
私は私の静かな夜を施設の中で過ごしていた
施設の中には静寂と一人一人の息づかいが聞こえるのみ
私の施設が静かに静かに眠りにつくころ
私の知らない遠くの施設であの惨劇は起きてしまった
私の施設で起きたとしてもまったくおかしくなかったできごとが
私の施設ではない場所で起きたことに
私は不思議な不思議な偶然と幸運とを感じつつ
私の施設で起こったならば犠牲にならずにすんだ仲間の悲運を思った
私にとって悲劇はこのような幸運と悲運との間で起こったものだから
私はどうしてもこのことが他人事には思えなかったのだ
今一年が終わろうとする時に、
私はこの事件をこの一年のできごととして忘れさせてはいけないと
改めて冬の青空に誓った


  やまゆりよ永遠に咲け

やまゆりは無残に踏みしだかれてしまったけれど
やまゆりの花は静かに涙を流し
そこにふたたび山百合の新しい芽が涙を吸って地上に姿を現した
この新しい芽にはそれまでのやまゆりにはなかった悲しみが宿っている
この悲しみはこの間まちがって生まれてしまったものだけれど
やまゆりの悲しみはこれから永遠(とわ)にこの花に刻まれる
私はこの悲しみはたやすくいやされる悲しみではないと思う
だがこの悲しみをただの悲しみに終わらせてはいけないと思うから
私はやまゆりに新しい名前を与えようと思う
二度と戻らない命だからこそ
私はこの花の新しい芽にはそのよみがえりにつながる希望が
潜んでいなくてはならないと考える
だから私はやまゆりの新しい名前として
永遠(とわ)の悲しみのゆりという名前を与えよう
そうすれば亡くなった19人の命はけっして忘れられることなく
ずっと語り継がれ
いつか本当のことが明らかになった日に
もう一度やまゆりを高くかざして
悲しみを本当の理解とともによみがえらせて
新しい時代の始まりとしたいと思う


  山からおりてきた子りす

私のすみかに
山から子りすがおりてきた
子りすはいったい何を私に告げに来たのだろう
子りすが運ぶ希望のメッセージは
確かに私に届いたが
子りすの瞳に宿っている
悲しい光を
私は見逃すことはできない
子りすはきっとあのやまゆりの里の
悲しいできごとを
どこかで聞いたに違いない
だからせっかくの希望のメッセージを
笑顔で伝えることはできなかった
だけど私は子リスにそっとささやいた
希望のメッセージをありがとう
今こそ世界は希望を求めているから
あなたはその瞳をそのままに
再び希望を届けに隣りの里へと
旅を続けてほしい
いつかこの悲しみが癒える日にもう一度
あなたの希望のメッセージが
世界中に満ち溢れ
あなたの瞳に喜びの光が
射す日が来るでしょう


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プロフィール

柴田保之

Author:柴田保之
所属:國學院大學人間開発学部初等教育学科
重度重複障害児の教育、知的障害者の社会教育、介助つきコミュニケーションについて実践的に研究を進めています。

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